思い出すこと。
寒い日が続いていますが、例年よりは暖かいそうです。
でも、寒いと感じてしまうのですから不思議です。
寒い寒いと言っていてもはじまらないので、話を進めます。
私は、基本的に動物に嫌われます。
何度も書きましたが、注射や検査で
動物たちに嫌な思いをさせていることが原因でしょう。
10数年前に「クッキー」という名前の
キリンを診療していました。
足に痛みがあるようだと、
担当者から報告があったのです。
キリンの部屋に行ってみると、
案の定、クッキーは
扉の向こうから顔だけを出して警戒しています。
「あぁ、また嫌われちゃうな」と思いましたが
診療はしなければいけません。
私におびえながら歩いている姿を見ると、
足に痛みがあるようです。
飲み薬を処方することにしました。
「いいかげん、慣れてくれよ・・・」と
捨て台詞をクッキーに残し、その場を去りました。
動物園では、いろんなことが起こります。
動物の赤ちゃんが生まれれば、喜びます。
動物が亡くなれば、落ち込みます。
何かあれば、一喜一憂してしまいます。
私は単純ですので、
その感情がつい顔に出てしまうのです。
感情を押し殺して仕事をするのが、プロだろ??って
言われればそうなのかもしれませんが・・・
喜んでる時は、明らかに浮かれているので
仲間のスタッフは知らんふり。
「また、浮かれてるよ」と思っているのかもしれません。
落ち込んでる時は、なぐさめてくれることもあります。
うれしいですね。
「しかたない。獣医さんを元気づけてやるか!」ってな
感じでしょう。
こんなことを言ったら、
プロとしての自覚がない!と、お叱りをいただきそうですが・・・
まあ、私も人間ですから。
次の日に、事件が起こりました。
とっても寒い日でした。
私が人工哺育をしているライオンの容態が、
急変したのです。
3頭の赤ちゃんが生まれたのですが、2頭は死産でした。
残りの1頭も、瀕死の状態でしたが
なんとか一命を取り留めて、人工哺育をはじめました。
1週間目。
やっと目が開き、ミルクを私の持った哺乳びんから
ゴクゴクと飲みはじめた矢先のことです。
スタッフの協力もあり、
少しずつ良くなっているような気がしていたのです。
私が現場に到着するとすぐに、
呼吸は止まり、小さな命の火は消えてしまいました。
理由のハッキリしている時は、対処ができます。
今回は、何が悪かったのかワカリマセン・・・
なぜ?ワカリマセン。
こんな時がいちばん、落ち込みます。
落ち込んでも、何があっても診療は続きます。
落ち込んだまま、キリンの部屋へ。
相変わらずキリンのクッキーは、
扉の向こうで警戒中。
「仕方ないなぁ。足を診ますか」と、
あきらめがちに近づきました。
するとクッキーが、
ゆっくりと近くに来て、私の頭をなめるのです。
涙が出ました。
昨日までは、近づきもしなかったクッキー。
落ち込んでる気持ちを、察してくれたのでしょうか。
クッキーの本当の気持ちはわかりませんが
涙がでました。
こんなふうに動物に助けられているから、
私は幸せなんでしょう。
ただし、頭は
クッキーのヨダレだらけで、ベトベトでしたが・・・^_^;
寒い日に、ときどき思い出すのです。

神田先生、こんにちは。そして少し遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
獣医さんのつらいところは、「動物にいくら嫌われようと、動物が好きでなければならない」というところなんですね。
ただ「動物が好き」という人は私も含めて多くいるでしょうが、逃げられても、吠えられても
、咬まれても、引っ掻かれても、蹴飛ばされても、ツバをかけられても「動物が好き」でなければ獣医さんはつとまらないでしょう。
そこが獣医さんを羨ましく思うところでもあり、尊敬するところでもあります。
キリンは人の心を察して慰めてくれることがあるようですね。
またもや旭山の小菅先生のエピソードになりますが、沈んだ気分で担当のキリンの世話をしていたところ、後ろからそっと肩のところに顔を置いてきて慰めてくれたことがあったそうです。
ライオンの赤ちゃんが生れたそうですね。ベビーラッシュのシーズンが始まりますが、御体に気をつけて。
それでは、また。
投稿: Macropus ridiculus | 2008年1月26日 (土) 07:41
>Macropus ridiculusさん
お久しぶりです。
まだまだ寒いですが、少しずつ春の予感がしています。
Macropus ridiculusさんの動物園情報は、スタッフよりも詳しいですね。
また、直接お話したいですね!
投稿: kanda | 2008年1月26日 (土) 15:45