5月から大手飲料メーカーの果汁入り飲料の値上げが始まるようです。
実に意外なことですが、最近話題となっている「バイオエタノール」が、値上げの大きな要因のようです。
ケンコーコム薬剤師 中山 美紀
バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシなどを発酵させて作るアルコールの一種で、ガソリンに混ぜることで、自動車燃料としても使える、新たな燃料用エネルギーとして注目されています。
バイオエタノールは、二酸化炭素を新たに排出しないため、地球温暖化対策のひとつとして、日本政府も力を入れているようです。
しかし、よく調べてみるとバイオエタノールが二酸化炭素を排出しないわけではないようですね。
植物は大気中から二酸化炭素を吸収して育つため、植物を原料とするバイオエタノールを燃やして二酸化炭素を排出しても、原料の植物が二酸化炭素を吸収するから総量は増えないということで、京都議定書では、バイオエタノールを利用しても二酸化炭素の排出量にカウントしないルールになっているようです。
そして、このバイオエタノールの原料をめぐって、食料事情に大きな影響が出ているようです。
まず、トウモロコシの価格が急騰したため、これを飼料としている牛のミルクや鶏の卵の価格にも影響がでてきます。さらに、不足しているトウモロコシを栽培するために熱帯雨林を伐採していきます。(トウモロコシ畑よりも、熱帯雨林の方が二酸化炭素を吸ってくれそうな気がするのは私だけでしょうか?)
また、日本果汁協会によると、オレンジ果汁の世界生産量の6割を占めるブラジルではバイオエタノールの原料となるサトウキビへの転作が進み、世界的なオレンジ生産量の減少につながっているということです。
そのため、5月から大手飲料メーカーの果汁入り飲料の値上げが始まるということなのですが・・・。
現在、世界中で約8億人が栄養不足の状態にあります。NPOの話では世界で燃料として使用されているエタノールを穀物に換算すると約3億人分の食糧に相当するそうです。
地球温暖化対策は絶対に必要なことではありますが、新しい燃料のために熱帯雨林を伐採したり、大切な食料をエネルギーに使用することは本末転倒のような気がしてなりません。
また、新型インフルエンザの流行が心配される中、消毒用エタノールの方は十分確保できるのか、という点も個人的にはちょっと気になっています。